著作権相談員です

開業してすぐに県会で著作権についての研修会が開催されました。クリエイターのようなこともしていたので、著作権の勉強はしなくてはと受講したんですが、著作権相談員の研修で、後日著作権相談員カードが送られてきました。

著作権とは

著作権について説明する前に、著作物を知る必要があります。

思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの(著作権法第2条第1項第1号)

要は、美術、音楽、小説、詩、脚本、演劇、映画、写真、建築、コンピューター・プログラムなどが著作物になります。著作権とはそれらの著作物を勝手に(無断で)使ったり、真似したり、コピーしたりすることは許されないということです。それから著作隣接権という権利もあります。これは、例えば作曲された楽曲の演奏者には演奏者の権利があります。

著作権フリーのケース

著作者の権利を侵害しない、という場合は、著作権フリーとなります。いくつか規定がありますが、関係のありそうなものだけピックアップします。

私的使用のための複製

例えばテレビ番組をビデオ録画する。本来は複製は著作権に引っかかりますが、個人的又は家族内といった範囲であれば私的使用と解釈されます。そもそもは家庭用にビデオが普及されたことから問題となったわけですが、その後にCD、DVDなどデジタル化され、現在はインターネット配信。こういった技術革新に対し著作権をどう守るのか、というのは課題は多いです。

ちなみに、よく職場で上司が気になった新聞のコピーを部下たちに回覧すること、よくあると思いますが、これは私的使用のための複製には該当しません。

引用と無断転載

引用は定められた様式で表現されていれば、許可はいらないとされています。あくまでトピックとして、紹介する、自分の考えを補完する等の目的で利用されますが、あまりに度が過ぎると無断転載と判断されかねません。ネット上の記事はいろいろと問題がありそうです。

著作権の保護期間

著作権には保護期間が定められていて、著作者の死亡の翌年から70年後となっています。70年というととても長いようですが、「ミッキー・マウス」のウォルト・ディズニーは2023年で著作権が切れると言われています。これについては解釈がさまざまなようですが、とにかくディズニー側は保護期間の延長に一生懸命です。最近だと、「くまのプーさん」の保護期間が終わり、早速映画化されました。

著作権と利用許諾契約

著作権は、以下の権利の束のことをいいます。

複製権印刷、コピー、写真撮影、録音、録画などの方法によって著作物を再製する権利
上演権・演奏権著作物を公に上演したり、演奏する権利
上映権著作物を公に上映する権利
公衆送信権著作物を放送・有線放送したり、インターネットにアップロード(送信可能化)したりして、公に伝達する権利
口述権著作物を朗読などの方法で口頭で公に伝える権利
展示権美術の著作物と未発光の写真著作物の、原作品を公に展示する権利
頒布権映画の著作物の複製物を公衆に譲渡・貸与する権利
譲渡権映画以外の著作物の原作品や複製物を譲渡によって公衆に提供する権利
貸与権映画以外の著作物の複製物を貸与によって公衆に提供する権利
翻訳権・翻案権等著作物を翻訳、編曲、変形、翻案する権利
二次的著作物の利用権二次的著作物については、二次的著作物の著作権だけでなく、原著作者も上記の各権利を持つ

著作権は、著作権をめぐる問題は、裁判になることが多いです。しかし、裁判になる前に、問題になる前に、あらかじめ準備しておくことで、回避できることが多いのも事実です。そのひとつが著作権の利用許諾契約を締結することです。

まとめ

著作権はみんな聞いたことがあるのに、いまいちその具体的な内容を知らないという権利のひとつです。著作者本人は、すでに人気作家になっていれば別ですが、その著作物が売れるか売れないかはわからないものです。

まだ売れないクリエイターさん、もう売れているクリエイターさんからの相談、お待ちしております。

スタートアップエコシステムを創造する

伊藤龍史「にいがたアントレプレナー学」の紹介。スタートアップエコシステム、スタートアップが次々と生まれてくる土壌、いちばん有名なのはアメリカのシリコンバレーである。いわゆるIT系のスタートアップがボコボコと生まれた地域である。なぜそれが可能であったのか。それが分かれば、ここ新潟にも作れるはず、というお話。

著者について

新潟大学経済科学部准教授である伊藤龍史氏。私も何度か講演に参加したことがある。経営学が専門で、アントレプレナーシップを研究している。シリコンバレーのあるサンノゼ州立大学に在籍していたこともあり、まさにシリコンバレーを知る人なわけだ。新潟でスタートアップを、ということでその中心にいるといっても過言ではないだろう。ゼミはすごく人気で、一般の方にも、それこそ起業家、あるいは起業家を目指す人にも開かれているというから、その人気も納得できる。

アントレプレナーシップとは

アントレプレナーシップとは、日本語に訳すと少し難しいが、起業家精神というのが近い。本書はこのアントレプレナーシップについての解説と、新潟県内の起業家を紹介していくかたちで構成されている。内容はちょっと難しい。で、結論からいうと新潟にスタートアップエコシステムはできるのか、についてははっきりと書かれてはいない。

ポストコロナとスタートアップ環境

ポストコロナを迎えて、東京一極集中はなくなるのであろうか。東京都の人口が減った、なんてニュースもあったものの、新潟県の人口は減っている。ではどこに行ったのかというと、東京でも新潟でもないのだろう。新潟から出て行く人は増えるし、東京から出る人は新潟でない別のところなのだ。

リモートや副業など、コロナ後に一気に加速した訳だが、地方にとっては非常にチャンスかもしれない。こうして新潟でスタートアップ環境を整えようという姿勢は素晴らしい。しかも、伊藤准教授を中心にしたコミュニティは、他では類を見ない取り組みではなかろうか。ぜひ、多くの方からこの本を手に取ってもらい、新潟を知ってもらいたい。

スタートアップ環境は重要である。スタートアップの成功のカギは、環境だと思う。なので、沢山の起業家、起業家を目指す人に注目してもらいたい。

ファースト・ペンギン。最初にリスクを冒して海に飛び込むペンギンのことである。起業家と似たようなマインドかもしれない。しかし、この動画にあるように、おバカさんで終わるか、リーダーになるかは、その環境に影響されるわけである。

まとめ

新潟にも起業家がいないわけではない。スタートアップ企業がないわけではない。ただ、なんとなくそういう印象が薄い。こうしてひとつにまとめてみると、良い環境が整備されていると知る。こういう取り組みをもっと情報発信していく必要がある。だって、ちょっとしたコワーキングスペースを設けて、キラキラしたセミナー開いて、なんとなくやってる感だけ出したってしょうがないじゃないですか。

にいがたアントレプレナー学 [ 伊藤龍史 ]
価格:1650円(税込、送料無料) (2022/8/24時点)楽天で購入

創業融資のポイント

日本政策金融公庫の創業融資のサポートさせていただきました。創業、というとなんとなく難しそうですが、ある意味、創業融資がもっとも借りやすい融資かもしれません。以前、行政書士会の研修で、日本政策金融公庫の職員の方を講師に、創業融資の研修を受けました。創業融資のポイントについてのお話です。

日本政策金融公庫とは

日本政策金融公庫なんて、聞きなれないかもしれませんが、金融機関のひとつです。公庫となっているので、公の金融機関ということです。各都道府県の主要都市にしかないので、あまり目にすることはないかと思います。

公の金融機関なので、民間と違い、ちょっと借りにくそうなケースを対象としています。創業融資もそうですし、セーフティネットとして、あるいは災害などの復興。民間では借りにくいような場合でも、安心して資金調達できるようになっています。

日本政策金融公庫の創業融資のポイント

創業融資については、3千万円まで借りることができ、しかも無担保・無保証人も可能です。しかし、借りやすい、といっても誰でも借りられるというわけでもありません。もっとも重視されるのは、まじめさ、です。

自己資金

事業に必要な資金、まずは自己資金が必要になります。自己資金の額は融資の要件ではありませんが、自己資金での不足分を借入するというイメージです。一般的には借入金の半分は自己資金が必要といわれています。

しかも、その自己資金、資金の出所です。ちょっと知り合いから借りて自己資金あるように見せかけるようなものは審査はとおりません。開業のために毎月の給料から積み立てていた、というはもっとも熱意が伝わるといわれています。この人は計画的に行動できる、とプラスの材料にもなります。

納税証明書

融資なので、いくら公の金融機関であっても返済してもらわなくてはなりません。きちんと返済できるかどうか、を納税証明書で判断します。納税に対してルーズなのは、決定的なダメージです。

資金繰り表

事業計画を立てて、資金繰り表を作り、資金の不足分を算出します。自己資金も含め、長期の資金計画に基づいて、借入額を計算します。そうした根拠のある数字が肝心で、借りられるだけ借りよう、という魂胆は簡単に見透かされます。

熱意

事業に対する熱意を伝えることです。計画書も重要ですが、面接の時の態度が左右します。つまり、面接した担当者は融資の決裁権はありません。決裁権のある上司が判断しますので、担当者から上司に、自身の熱意を伝えてもらう必要があるからです。担当者のひと押しがあるかないかで結果は大きく変わります。

まとめ

創業には何かとお金がかかるものです。しっかりと計画を立て、しっかりと実施する。そういった何事も、しっかり、やること、つまりまじめに取り組む姿勢が、評価されます。創業融資に関する相談もお待ちしております。

それから、資金計画には生活費も忘れずに計上しましょう。

経済産業省被災中小企業・小規模事業者対策について

東北・北陸での記録的大雨で被災された皆様には、心からお見舞い申し上げます。この度、災害救助法が適用されたことを踏まえ、被災中小企業・小規模事業者対策が発表されました。今日はそのお話。

被災中小企業・小規模事業者対策とは

8月3日からの大雨による災害に関して、山形県及び新潟県の6市6町1村、石川県の6市1町に災害救助法が適用されました。

令和4年8月3日からの大雨による災害に関して被災中小企業・小規模事業者対策を行います(経済産業省HP)

特別相談窓口の設置

山形県、新潟県及び石川県の日本政策金融公庫、商工組合中央金庫、信用保証協会、商工会議所、商工会連合会、中小企業団体中央会及びよろず支援拠点等で、特別相談窓口が設置されます。

令和4年8月3日からの大雨による災害に関する特別相談窓口一覧(経済産業省HP)

災害復旧貸付の実施

今般の大雨により被害を受けた中小企業・小規模事業者を対象に、山形県、新潟県及び石川県の日本政策金融公庫及び商工組合中央金庫が運転資金又は設備資金を融資する災害復旧貸付を実施されます。

国民生活事業で3千万円まで、中小企業事業で1億5千万円までの融資が受けられます。国民生活事業が小規模事業者や個人事業主を対象に融資を行うことに対し、中小企業事業では資本金1,000万円以上の中小企業を対象に融資を行っています。

日本政策金融公庫の災害復旧貸付の概要(経済産業省HP)

セーフティネット保証4号の適用

セーフティネット保証4号とは、信用保証協会が一般保証とは別枠の限度額で融資額100%を保証されるものです。地域の指定は後日告知される予定ですが、事前相談が受けられます。

セーフティネット保証4号の概要(経済産業省HP)

既往債務の返済条件緩和等の対応

山形県、新潟県及び石川県の日本政策金融公庫、商工組合中央金庫及び信用保証協会に対して、返済猶予等の既往債務の条件変更、貸出手続きの迅速化及び担保徴求の弾力化を要請するもので、これによりリスケなど柔軟に対応してもらえることが期待できます。

小規模企業共済災害時貸付の適用

中小企業基盤整備機構が原則として即日で低利で融資を行う災害時貸付を実施します。

小規模企業共済災害時貸付の概要(経済産業省HP)

まとめ

生活再建もままならない状況かとは思いますが、該当する方は早めに事前相談されることをおすすめします。前回お話しした罹災証明書が必要なケースもありますので、そちらもあらためてご覧ください。

罹災証明書の基礎知識

罹災証明書の基礎知識

東北・北陸での記録的大雨で被災された皆様には、心からお見舞い申し上げます。河川氾濫、土砂災害、住宅浸水と多大なる被害をもたらした記録的大雨でした。今後、復旧に向けても何かと大変かと思いますが、今回は罹災証明書についてお話しします。

罹災証明書とは

罹災(りさい)証明書とは、災害対策基本法で定められたもので、市町村がその被害の程度を証明するものです。被災者の申請により、市町村が調査するもので、新潟県中越地震以後に法制化されたと記憶しています。主に支援措置等の適用に必要な書類となっています。住宅の損害の程度によって、被害状況を示しています。

災害の種類

災害の種類は、水害、地震、風害、火災などで、その種類によって調査します。地震の場合は見た目だけでなく、構造的に損傷がないかというところまで調査します。反対に水害の場合は床上浸水は半壊以上と簡単な調査で済むこともあります。国で指定されるような大きな規模の災害は一斉に調査されますが、規模の大きさに関わらず申請することは可能です。

被害の程度

被害の程度は、損害の割合に応じて3段階に分類されます。

全壊

修繕の難しい状況です。通常であれば取り壊しなければならない場合で、最も被害の大きいものです。見た目には被害がないようでも、住宅の躯体に相当の歪みがあったり、建屋に損害がなくても地盤に直接被害がある場合にもこれに相当します。

大規模半壊

全壊に準じた状況です。修繕は可能であるが、大掛かりな修繕が必要となるようなもの。あるいは取り壊ししなければならないような被害です。

半壊

修繕が必要な被害があったことを示すものです。修繕可能な被害はほとんどこれに該当します。

半壊に至らない(一部損壊)

応急修理で対応できる程度の状況を示すものです。

活用できる支援

被害の程度により、活用できる支援は異なります。義援金や支援金などの給付。災害関連の融資。税金や公共料金等の減免。仮設住宅の入居。それ以外にも保険等でも必要になる場合もあります。

よくある質問

調査をしていてよくある質問をいくつかまとめました。

災害が原因であると特定できない

家屋の場合は、経年により劣化していくものです。地震の場合、古い家屋には、もしかしたら、前にあった地震で壁にひびが入ったことも考えられるわけです。もちろん今回の地震による被害のみが被害の状況を示すものですが、このあたりについては、市町村が取り扱いを定めるようです。

応急危険度判定との違い

よく間違われる制度としては、地震の応急危険度判定があります。これは都道府県が実施するもので、被災建築物の調査により、使用の可否、注意喚起を行うものです。「調査済」、「要注意」、「危険」に区分され、罹災証明書と似ていますが、これは建物の倒壊による二次災害を防ぐためのものです。「危険」と赤紙を貼られた建物でも、必ずしも「全壊」に該当するとはかぎりません。

再調査も可

被害認定の調査は目視、聴取で、住人立会いにより実施しますので、より正確な調査といえますが、見落としや聞き逃しなどもあるわけで、調査結果に納得できない場合は、再調査も可能です。

まとめ

再建に向けては何かと大変な思いをされるかと思いますが、罹災証明書はその支援を受けるためにはなくてはならないものです。調査にあたってはできるだけ被害の情報を提供できるように準備することをおすすめします。